着物大学

最初に着物を作る時の注意点

最初に着物を作る時は、次の点に注意しましょう。

1、自分が着物を着る場面を具体的にする。
2、自分のセンスに合うお店を探す。
3、自分の手持ちのアイテムを整理する。
4、「似合う」を指摘してくれる人と一緒に選ぶ。

○必要な着物のTPOを明確にしましょう

着物を選びにお店に行くと、どんな着物が入用なのか、まず尋ねられると思います。
そこがはっきりしないまま、なんとなく購入してしまうと、後になって何か違った。ということになりかねません。
ですから、自分にはどんな着物が必要なのか、明確にすることは大事なことです。

なぜなら着物には、種類、格、季節感があるからです。
せっかく着物を作っても、お召しになりたいTPOに合わない着物では意味がありません。

その際、礼装(フォーマル)と洒落もの(カジュアル)では、自由度に差があります。

礼装では、慣習やルールに則った装いが求められます。
また、家の格式、親戚との関係、職場の職位などで、求められる格や豪華さがあるのです。
礼装は、同席する方々に対して礼を尽くし、敬意を表すための装いだからです。

例えば、子どもの結婚式の母親としての黒留袖は、既婚女性の第一礼装であり、小物に至るまで細かい決まりがあります。

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↓七五三のお祝いの訪問着。お母様としての控えめさと上品さが求められます。

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礼装では、袷、単衣、夏物の切り替えも、衣替えのルールに従う方がよいとされていますね。(現在は冷房設備が整った会場が多く、例外もあります)

反対に、洒落ものはかなり自由度が高く、遊ぶことができます。
小紋や紬・御召に、名古屋帯を合わせるスタイルが一般的ですが、洒落ものとして楽しめる柄行きの訪問着や袋帯も、たくさんあります。
もっとカジュアルにするには、木綿着物に半巾帯や、浴衣があります。

また、夏の洒落ものは、麻や芭蕉布、科布など、自然布の種類が多くなり、その点でも面白さがありますね。

ご自分の個性を大いに表現していただきたい着物です。

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初めて着物を作る時に、具体的に着物をお召しになりたい行事や場面が控えている、という方は、照準がはっきりしていますので、どんな着物が必要か、比較的わかりやすいですね。

単純に着物に興味があって着てみたいから。とか、今までは譲り受けた着物や、ご家族が用意してくれた着物を楽しんでいたけれど、物足りなくなったから。という理由の方もいらっしゃるかもしれませんね。

どんな理由であれ、生活の中でどんなふうに着物を楽しみたいか、また、どんなときに着てみたいか、というイメージをお持ちでしょう。
それをなるべく具体的に考えてみましょう。

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結婚式、授賞式、お茶会、食事会、祝賀会、お子様の成長祝い(七五三や卒入学式)、お正月、観劇、同窓会、ショッピング、旅行などなど。
式典用なのか、華やかなセミフォーマルか、きちんと感のあるお出かけ着なのか、気軽な街着なのか。

お出かけする場所は、屋外ですか?屋内ですか?会場の広さは?
例えば、結婚式であったら、ホテルの広間なのか、レストランなのか、ガーデンウエディングなのか、などです。
季節は?時間帯は?

仕事関係なのか、プライベートなのか。
主催者としてか、招待客としてなのか。
上司として、妻として、母親として?
ご一緒する方との関係性は?

このように、いつ、どこで、なんのために、ということを、絞りこんでみてください。
装う場面での、自分の目的と立場をはっきりさせることで、相応しい着物が見えてきますし、合わせる帯や小物のコーディネートも決まってきます。

もちろん、礼装からカジュアルまで、すべての場面を最初に作る一枚の着物でカバーするのは不可能です。
ですが、ご自分のライフスタイルを整理することで、多くの場面で使える着物がわかってきます。
ですから、お店にお出かけになったら、着物が必要な場面や着物に求めることを、忌憚なく話してくださいね。

具体的に例を挙げてみましょう。

例1) 部下の結婚式の上司や主賓としての着姿

求められる着姿とは?
・結婚式披露宴ですから豪華さが必要ですが、目立ち過ぎないこと。
・大人の女性らしい品格のある、質の良いものであること。
・憧れられるような趣味の良さ、格好よさがあること。

以上の点を意識して着物を選ぶと、種類と格はこうなります。

華やかな訪問着か付下げに、センスのよい袋帯。

 

○上品で明るい色合いの色無地に、豪華な袋帯。

(色無地は華やかさが足りないので、帯で補う必要があります)

すっきりと格好よい個性をお持ちの方は、小物などで女性らしさをプラスすると、一層素敵になります。
逆に、可愛らしいものがお似合いになる方は、若々しい可愛さを残しつつ、シルバーや白、紺や水色などのモダンさや格好よさを出しやすい色を取り入れるとよいでしょう。

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例2) ご主人の立場上の奥様としての着姿

求められる着姿とは?
・ご主人の装いと格が釣り合っていること。
・主張し過ぎない控えめさがあること。
・女性らしいやわらかさ、上品な華やかさがあること。

ご主人のお立場やお仕事にもよりますが、格好よさや強さはそれほど必要ありません。

↓姪御さまの結婚式に。
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↓ご主人の会食に同行。
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どんなふうに自分をプロデュースしたいかによって、コーディネートの方向性が変わってきます。
例えば、年下の方や、同僚や友人などの女性の多い集まりでは、凛とした格好よさや、一歩先を行くようなお洒落さが素敵に映ります。
ご自身より年配の方や、男性の多い場所には、女性らしいやわらかさや、さりげない可愛らしさを取り入れると、好印象です。

また、母や妻としてなら上品な優しさや落ち着きが必要ですが、上司や経営者としては頼もしさや、品格、豪華さが必要になります。

○似合う着物の選び方

似合う着物とはどんな着物でしょうか。
着物の格や季節感が合っていることと同じくらい、似合うということも大切です。

++似合う色は肌と目と髪の色によって違う++
着物は体を覆う面積が広いですから、似合う色であることはとても重要な問題です。
似合う色の着物を当てると、顔の輪郭がはっきりして、顔色が明るく見えます。
肌の色、目や髪の色が影響します。

肌の色がピンク系の方は、青や紫、ピンク、銀が似合います。
イエロー系の方は、緑、オレンジ、ベージュや茶色が合いますね。
また、色の白い方は透明感の高い色が引き立ちます。

↓肌の色がピンク系なので、藤紫の反物の方が、顔色が明るく見えます。
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また、髪や目の色が黒いと、強い色がどこかにあった方が、顔立ちをはっきりさせます。
髪の色が薄くなり、茶色→薄い茶色と茶色の色が薄いほど、薄い色が合うようになります。

好きな着物なのに、何かぴったりこない。顔映りがいま一つ、ということもありますね。
そうしたときは、半衿や伊達衿(重ね衿)に似合う色を入れることで、肌の色と馴染ませることができます。口紅やチークの色でも多少の調整が可能です。

けれど、最初から顔映りの良い着物を選んだ方が、帯や小物の幅が広がります。
つまり、帯を足し、小物を足すことでさらに素敵になるコーディネートがしやすいのです。
最初に作る一枚は、せっかくですから、他者からの称賛度の高い、似合う色合いのものを選ばれた方がよいでしょう。

着物を畳に広げて見ているだけではわかりませんので、違う色合いのものを、いくつか当ててみることをお勧めします。

++個性で違う必要な色数++
個性の違いで、全体の着姿で必要な色数も変わってきます。

・1.2色~2色ですっきりと着こなされた方がよい方。
・2色では物足りず、3色がぴったりする方。
・4色以上の色数が必要な方。
・強い色が必要な方
・華やかさが必要な方

これらは色個性(着物のファッションタイプ)を知ることで、判断できます。
http://www.kimono-bito.com/z-90928ab/kimono-fashion-sense.php
色の数は、生地の素材感や柄の多さでも補うことができます。

その方に必要な色数によって、同じ着物でも選ぶ帯や小物が違ってきます。
これは、着物と帯を並べるだけでは判断がつきません。
置いて見ているときは素敵でも、いざ着てみると、あれ??ということになります。
必ず、ご自分の顔とセットで見てくださいね。

似合うものを選ぶには、ご自分を知ることが大切になってきます。
個性を知ることは、一番難しいところですね。

似合う色合いも、必要な色数も、自分ではよくわからないということもあるでしょう。
ですが、着物を選びに行ったとき、ご自分でその点を意識して考えてみるだけでも、違うはずです。
そして、なるべくたくさんの人の意見を聞いてみることです。
何を見ても「素敵」「似合う」という方の言葉は、あまり参考になりません。
一緒にお店に行くなら、はっきりと遠慮のない感想を言ってくださる方と行きましょう。

○理想的なお店とは

一番重要なことは、お店のセンスが自分と合っていることです。

シックで上品。
はんなり華やか。
粋で格好いい。
洋服感覚で都会的。
渋くて味わい深い。
大人可愛い。
などなど。

一軒のお店でもいろいろな商品を扱っているものですし、はっきりと偏りがあるわけではありませんが、やはり、お店の特色というものはあるのです。

HPやSNSで情報を発信している呉服屋さんも最近は多くあります。
お店に行く前に、ネットで商品の雰囲気を確認するのも良い手ですね。
気になった商品や、好みに響く感じのお店があれば、チェックして問い合わせてみましょう。

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実際に店舗へ行って、お店の方とお話しすると、雰囲気や商品の傾向がもっとわかります。

様子見の来店であれば、「どんなお店か気になったので、今日は下見です」とか、「まだ時間があるので、今日は見せていただくだけで」など、はっきり告げましょう。
そんなときに、強引に引き止めたり、無理に勧めたりするようなお店は、やめた方がよいと思います。

着物を知って、自分を知ってくれる呉服屋さんを選ぶことが、似合う着物への近道です。
質問にわかりやすく答えてくれて、ライフスタイルや好みをよく考慮してくれるお店が安心ですね。

似合わない着物、個性に合わない着物は、コーディネートが難しくなるので、結局使い勝手が悪く、出番がなくなっていきます。
似合っていても、好みに合わない着物もまた、同様です。

自分をよく知り、なぜそれが似合うのか。また好きなのかを自覚することで、似合うと好きの二つを近づけていくことができます。
そのお手伝いを上手にしてくれるお店に出会えることが理想ですね。

また、着物を作る時には、なるべく時間に余裕を持ってお店を探しましょう。
できあがるまでにどのくらいかかるかは、お店によって違いますが、少なくとも、お仕立てに一ヶ月程度は見ておくとよいと思います。
時間がないときは、お急ぎで対応してくれるかどうか確認しましょう。

○お店に行く前に

自分の箪笥の中身(着物や帯、小物類)を確認しましょう。
譲られたものや、お嫁入りのときに持たせてくれたものなどがあれば、出してみましょう。

使いたいもの、また、使えるかどうかわからないものがあれば、お店に行くときに持っていくか、写真を撮っておくかして、質問できるようにしておきましょう。
お持ちのものと似たようなものを選んでしまうことも防げます。

このように、写真を撮って持っていって見てもらうことはとても重要です。

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自分の持ちものの何を生かせるのか、生かせないのかの見極めは難しいのです。
まだ使えても、それが見栄えがしないことがあります。

・TPOには合っているけれど、個性に合っていない。
・色や柄が古い。時代遅れな感じになってしまう。
・格は合っているが、年齢や立場にそぐわない。

などの理由が考えられますが、それを教えてくれる人は少ないのです。

いいですよ、いいですよと言っていれば平和なのですが、きものは全身を覆うので、似合わないとか間違った着方をしたら、とてもおかしいのです。

けれど、ぴったり似合うものを持っているのに、気がつかないということも、また勿体ないことです。
的確な判断をしてもらうためにも、お店に行く前に、自分の持ち物を把握し、質問できるよう準備しておくとよいでしょう。

参考サイト

伊藤康子のきものライフコンサルティング

「似合うかどうか」を知る方法!

部下の結婚式で着る着物の帯

[特集] 40代きものライフリポート 結婚披露宴&パーティ

きものライフコンサルティング

この記事を書いた人

ban-kiji_kaithit_yamamoto01

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