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浴衣の基礎知識とコーディネート

   2017/02/21 コーディネート 基礎知識 浴衣

1、「浴衣」とは?

浴衣は、薄手の木綿生地に染めを施した単衣仕立ての着物のことで、今では、夏の着物の代名詞のようになっています。

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原型は、平安時代の湯帷子(ゆかたびら)にさかのぼると言われています。
湯帷子とは、入浴時にまとった薄い麻の単衣のことで、主に公卿(貴族階級)に使われていました。

時代が下るにつれ、湯上りの身拭いや寝間着として用いられるようになり、その頃から、麻から木綿に変わっていきます。
庶民に広がったのは風呂屋が普及した江戸時代です。
最初はバスローブのような下着として用いていたものが、風呂上りにそのまま外へ着て歩くようになり、外出できる普段着へと用途を変えていきました。

盆踊りや花見などに揃いの浴衣を着ることが流行し始めたのも、江戸時代です。
歌舞伎の人気役者が着た洒落た柄や、大胆な構図の柄が流行りました。

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(左)鎌、輪っか、ぬ、「構わぬ」 市川団十郎
(右)小さい斧=よき、琴、菊、「善きこと聞く」 尾上菊五郎

現代では、「浴衣」と呼ばれる着物は大きく分けて二種類、思い浮かぶと思います。
旅館などによくある寝間着や部屋着としての浴衣と、花火大会や夏祭りなどで着る外出着としての浴衣です。

寝間着や部屋着としては、一年中使われていますが、外出着としての浴衣は「夏の着物」という括りになりますね。

ですから、夏着物のシーズンである7月8月が浴衣の季節です。
花火大会や夏祭り、浴衣イベントであれば、6月や9月にも活躍します。

先にお話ししたように、浴衣は元々、湯上りに素肌にまとったものです。
ですから、今でも基本的に、浴衣を着るときは長襦袢を使いません。

浴衣以外の着物は着物の下に長襦袢を着ますので、素肌にまとうのは浴衣の特徴と言えるでしょう。
外からパッと見てわかりやすい違いは衿元ですね。長襦袢を下に重ねていれば、半衿(長襦袢の衿)が見えるはずです。

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(左)浴衣の衿元 (右)絽着物の衿元

昔は、浴衣と言えば紺地か白地でした。
白地の浴衣は、夏の暑い真昼に涼しげですし、また、紺地の浴衣は、染料の藍を虫が嫌うので、虫の多くなる夕方から夜に着るとよいと言われました。
まったく逆に、江戸の女性は紺地を昼に、白地を夜にしていたという説もあるようです。

現代では、普段着や日常着ではなく、夏の外出着・お洒落着として浴衣を用いるようになったことで、多色の華やかな色柄の浴衣がたくさん作られるようになりました。
また、木綿だけでなく、ポリエステルや綿麻、綿絹の反物も浴衣として売られています。

そこで、最近では、正絹や麻の夏着物のように、浴衣に長襦袢を合わせて着るコーディネートも浸透してきました。
そうすることで、見た目の格がちょっと上がり、活用範囲が広がります。

今回は、こうした夏の遊び着として定着した、外出着としての浴衣について、お話しします。

2、浴衣の下には何を着る?

浴衣は素肌にまとうことが特徴とは言っても、外出着ですから、透けては困ります。
汗対策も必要ですから、浴衣下には、少なくとも一枚、インナーを身につけるとよいでしょう。
白っぽい色の浴衣、生地風や織り方の透け感の強い浴衣は、特に注意しましょう。

和装肌着では、綿、麻、綿麻、キュプラなどをよく見かけますね。
生地風はガーゼや平織の他に、楊柳、絽、ちぢみなど、夏向きのものがあります。
裾捌きの良いものを選びましょう。

<肌襦袢と裾除けorステテコ>
上半身だけの肌襦袢はと裾除けは、和装肌着の定番ですね。
浴衣に限らず、夏は「あしべ織汗取り」肌着を愛用の方も多いようです。

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裾除けは、骨盤を寄せてお尻を引き上げる効果があります。
ちょっとしたコツはいりますが、ガードルの役目もしてくれます。
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ステテコは、足の間がぺたぺたして気になるという方に向いています。
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<着物スリップ、ワンピース型の肌襦袢>
着物スリップやワンピース型の肌襦袢は、前合わせのものや、スカート型のものなど、いろいろ出ています。
上下が繋がっているので、楽に着られます。
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<浴衣スリップ>
浴衣スリップは、着物スリップよりも袖が少し短めだったり、ノースリーブであったりします。
透けないように、肌色のものもあるようです。

<タンクトップ、キャミソール、スリップ、ペチコート>
洋服の時に使う普通のインナーでも大丈夫ですが、厚みや色など、外に響かないものを選びましょう。
ペチコートは少し長めのものを選ぶとよいでしょう。
浴衣の衿を少し抜くので、タンクトップは背中の衿繰りが大きいものを使いましょう。

3、浴衣の基本スタイル

浴衣+半巾帯+下駄
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○浴衣に合わせる半巾帯
厚ぼったくなくて、涼しげに見えるものを選びましょう。

浴衣と帯の組み合わせは、お似合いになるものが人それぞれ違いますが、浴衣の中の一番少ない色を帯のメインカラーにすると、まとまりやすいです。
ピンクにブルー、水色に黄色など、まったく違う色を合わせてもメリハリが出ます。

半巾帯には、袋になって芯が入っている小袋帯と、単衣の帯があります。
単衣の帯の方が薄いので、涼しいですね。
小袋帯は、裏表の色柄が違うものが多いので、結び方によって両方の柄を楽しめます。

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<ポリエステルの半巾帯>
無地から柄物まで、たくさんの色柄があり、華やかです。
自然素材よりも通気性に劣ります。

<麻・綿・絽の染帯、刺繍帯>
麻の方がカジュアルな雰囲気になり、絽の帯は上品です。
絞り染めや紅型染めの帯もあります。
たれ先にワンポイントの刺繍や絵があるものも、お洒落で可愛いですね。

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<織の帯>
博多、花織、ミンサーの半巾も浴衣に合います。
博多の紗の帯はとても軽くて涼しげです。

<兵児帯>
男性や子どもの帯のイメージがありますが、大人の女性用の兵児帯も出ています。
やわらかく締めやすいです。イメージとしては、一番カジュアルになります。

○浴衣の足元
<下駄>
浴衣には素足に下駄を履きます。
下駄とは、木製の台に花緒をすげたものを言います。
底に歯が二本付いているものを連想しがちですが、草履のようなぺったりした底でも、木でできていれば下駄です。

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柾目のきれいな白木の下駄や、いろんな塗りや彫を施した下駄があります。
花緒でも印象が変わります。麻や木綿は軽快です。絽に刺繍の花緒になると、上品になりますね。
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浴衣の下駄は素足に履くので、慣れていない方は鼻緒ずれになってしまうことがあります。
鼻緒ずれ防止の最もよい方法は、自分の足に合わせてすげてもらうことです。

とはいえ、近くにお店がないとか、時間がないとか、いろいろな事情がありますね。
できあがり品を購入するなら、鼻緒がやわらかく広幅のものの方が、鼻緒ずれを起こしにくいので、なるべくそうしたものを選ぶようにするとよいでしょう。
下駄や草履は、足のかかとが少し出るくらいが適応サイズです。

初めて降ろす下駄なら、前ツボ(指で挟むところ)や鼻緒を揉んで柔らかくしておきます。
履き慣れていなくて心配だったら、出かける前に履いておきましょう。家の中でもよいですが、できれば外を軽く散歩してみるとよいでしょう。
歩くときは、足の指を奥まで入れないで、親指と人差し指で前ツボを挟んで持ち上げるような気持ちで歩くとよいと言いますが、これも慣れていないと難しいですね。

きついと思ったら、緩むと言ってもほんの少しですが、前ツボを引っ張ってみましょう。
鼻緒が自分の足の甲の形に合っていなかったら、鼻緒を捻ったり揉んだりして、なるべく添うように整えておきましょう。

出かけた先で擦れて痛くなりそうな気配がしたら、酷くなる前に保護テープや絆創膏等を足に貼ってガードしましょう。

<草履はだめ?>
草履は基本的に素足では履きません。
ですが、今では、カジュアルなお洒落草履の中には、素足で履いておかしくないものもあるようです。
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<サンダルは?>
野外コンサートや、ライブ、スポーツ観戦など、アクティブでファッション自由度の高い場所では、そうした着こなしの方もいらっしゃいますね。

スタンダードな着こなしではありませんが、全体のコーディネートとしてまとまっており、お出かけする場所にいて違和感がなければ、自由だと思います。
浴衣は遊び着ですし、他の着物よりもルールの自由度を高く考えてよいでしょう。
下駄とサンダルの中間のような履き物もありますね。

また、小さなお子様は慣れない下駄だと足が痛くなったりしますので、臨機応変にしてあげればよいでしょう。

4、浴衣の格上げスタイルのポイント

○浴衣をきもの風に着こなす
A 半巾帯から名古屋帯に
B 長襦袢or半襦袢を着て半衿を見せる
C 足袋を履く

この三点を変化させることで、カジュアルな中にきちんと感を出し、浴衣を格上げできます。
軽い日常の着物として浴衣をお召しいただけます。

帯を名古屋帯にすることで、半巾帯よりも「よそゆき」の雰囲気になります。
基本スタイルより、大人っぽく着こなしたい方にお薦めです。
浴衣に半巾で出かけるのはちょっと抵抗がある人も、これなら大丈夫ですね。
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長襦袢を着るかどうか、足袋を履くかどうか、については、TPOに合わせて考える必要があります。

長襦袢を着ると、普通の着物に見た目が近づきます。つまり、浴衣本来の素肌にまとうすっきりした魅力からは離れるということです。
お祭り見物や、花火大会という、浴衣を着ていく方が多い場所では、長襦袢を着ない方が場に合って、浴衣の魅力を発揮できるように思います。

浴衣として着たいのではなく、カジュアルな夏着物の代わりに浴衣を着ていくなら、着物風に着た方がしっくりくるでしょう。
例えば、ランチやディナーに行く、夏の旅行先の観光地を歩く、気軽な会場でのコンサートや観劇などが思い浮かびます。

素足というのはいかにも涼しげで、浴衣に合います。
けれど、足袋を履いた慎ましさが必要な場面もありますし、ある程度の年齢の方は素足よりも足袋を履いた方が、上品な美しさが好ましく感じられたりします。

組み合わせの例をいくつか見ていきましょう。

<浴衣として着て、大人感を出したいとき>
・Aのみ 名古屋帯
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・A+C 名古屋帯、長襦袢なし、足袋あり
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足袋を履くことで、カジュアル感が減って、真面目さと慎ましさが出ます。
室内で和室に上がるときなどは、履いて行かれるとよいかもしれません。

<軽い日常の街着として着たいとき>
・A+B+C 名古屋帯、長襦袢あり、足袋あり
長襦袢をお召しでしたら、足袋を履いた方が全体のバランスが良いように思います。
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<夏着物として着つつ、気軽さとこなれた遊び感覚が欲しいとき>
・B+C 半巾帯、長襦袢あり、足袋あり

半巾帯に半衿、足袋のスタイルにするなら、半巾帯は素材感や高級感のある帯を選び、帯締めや三分紐を使ったり、結び方を大人っぽくしたり工夫しましょう。

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ただ、あくまで夏の浴衣に締める帯ですから、あまり立派な格の高い半巾帯を締める必要はありません。
例えば、半巾帯でも、金糸の入った組みひもの帯は格が高く、浴衣には重たい印象になるので気をつけましょう。

○着物風に着る浴衣
いわゆる高級浴衣が、着物風の着こなしに向いていると言われています。
生地の種類では、絹紅梅、綿紅梅、綿絽。
染めの技法で言えば、絞り、型友禅、紅型、長板中形などです。

もちろん、一反一反、染めや色、意匠が違いますから、一括りにして絶対にダメとか良いとかいうことはありません。
今、挙げたもの以外でも、着物風の着こなしが似合う浴衣もあるでしょう。

それでは、それぞれの特徴をみていきましょう。

生地の違いで、浴衣にも多少の格の上下があります。
浴衣地の定番である綿コーマよりも、紅梅や綿絽は光沢感や透け感があり、着物風の着こなしに向いています。
綿絽<綿紅梅<絹紅梅の順に、透け感は強くなります。

<綿絽>
読んで字の如く、絽目に織ってある綿素材の生地です。
絽目とは、生地の中に現れる透き間のことを指しています。
綿コーマより、少し格上の扱いとなります。
浴衣としても、長襦袢を着た街着風にも、どちらも素敵に着こなせそうです。
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<紅梅(勾配織)>
太さの違う糸を織りこむことで、布に縞状や格子状の凹凸をつけた織物です。
綿糸の太さを変えた綿紅梅や、絹糸を織り込んだ絹紅梅、麻を織り込んだ綿麻紅梅があります。
涼しさと軽さは絹紅梅が上ですが、綿紅梅は水洗いができるので、メンテナンスが楽です。

綿紅梅は、綿絽よりもやや格上に扱われます。
長襦袢あり、なし、どちらの着方もポピュラーです。

絹紅梅は、地部分が絹で、格子になっている太い部分が綿です。
薄手の地に格子が浮き出て、涼しげに見えますね。
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浴衣の生地としては、上等なものですから、長襦袢と足袋をつけてお召しの方が多いように思います。
絹紅梅はとても薄い生地なので、裾除けだけだと透けてしまいそうな気がすることも一因でしょう。
浴衣としてお召しになってもよいのですが、透けない対策をしっかりしてください。

次に、染めの技法別に、いくつか挙げていきます。

<絞り>
糸で括ったり、板で挟んだりして防染する技法で染めた浴衣です。
有松鳴海絞りが木綿生地の絞りでは有名です。
京都は絹布の絞り染めが主でしたが、浴衣も生産されています。
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<長板中形>
染めに使用する台の長さが約6mにもなることから長板、柄の大きさを表す中形という言葉から生まれた名称です。
裏と表にズレなく染めることには高度な技術が必要で、江戸時代、木綿に施す最高級の染めとして、翻った布の裏まで染めてあることがステイタスとなり、流行しました。
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<注染>
明治の頃に始まった、手ぬぐいや浴衣に使われる染色の技法です。
反物を型紙の大きさで折りながら、糊置きを繰り返して防染します。その後、じょうろで染料を注ぎ込み、圧搾空気で裏まで浸透させます。
注いで染めることから「注染」と呼ばれます。
独特のやわからい風合いの染め上がりになります。
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浴衣の柄や雰囲気によっても、着物風が似合うものと似合わないものがあります。
↓落ち着いた色柄の浴衣は着物風の大人っぽい着こなしにマッチします。
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↓多色の浴衣らしい大きな柄は、本来の浴衣らしい着こなしの方が素敵に映るでしょう。
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○浴衣に合わせる名古屋帯
夏の名古屋帯。麻、カジュアルな紗、絽・博多献上など。
八寸帯の方が軽快で浴衣に合いますが、九寸帯でも雰囲気によっては浴衣に合うものもあります。
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定番はお太鼓ですが、角出しに結ぶのもいいですね。

○帯揚げ
絽、紗、麻の洒落物

○帯締め
細めの涼しげなもの。夏用のもの。三分紐に帯留でも。

○長襦袢
夏の長襦袢を着ましょう。
半襦袢・うそつき襦袢などと言われる、肌襦袢の衿に半衿がついたものも重宝です。
また、筒袖の半襦袢ですと、浴衣の袖丈や裄丈を気にせず着ることができるので、便利です。
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○半衿
夏の素材。カジュアルなもの。
絽、麻。ビーズ。レースなど。

○足袋
普通の白足袋。麻足袋もあります。
ラインストーンや刺繍が少し入ったものでも。

○履き物
下駄。夏の草履(麻、パナマなど)、カジュアルな草履。

5、浴衣のバッグ

カジュアルで、夏らしい、涼しげな雰囲気のもの。
かごバッグ(アタバッグ、藤蔓・葡萄蔓のバッグ等)
巾着
ストロー素材
麻や絽のバッグ
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6、浴衣の良いところ

他の着物に比べて安価なところ。
小物も少なくて済み、半巾帯でOKなので、着付けが楽。
多くの浴衣は綿なので、お手入れが簡単。
気軽なところ。洋服で言えば、Tシャツとデニム、もしくはラフなコットンワンピースに、足元はスニーカーかフラットなサンダル。といったスタイルと同格なので、気張らない場所に着て行ける。

気取らずに非日常を楽しめる、夏の季節行事(夏祭り、花火大会、盆踊り)にぴったり。
ライブやスポーツ観戦、ビアガーデンにも。
長襦袢を重ねて街着として着こなせば、大人の女性も安心して食事やショッピングにお出かけできる。

浴衣の良いところは、こんなにたくさんあります。
是非、浴衣でお出かけしてください!

参考サイト

伊藤康子のきものライフコンサルティング
http://kimono-bito.com/z-70213cordinate/index.htm

着物大学 夏の着物の特徴と留意点
http://www.kimono-bito.net/?p=821

和の服飾文化 浴衣の歴史
http://yukatabunka.com/archives/446

浴衣着付け(男女・帯結び)記事一覧
http://kimono-story.com/kimono74.html

きもの*BASICルール お茶のお稽古に着る浴衣
http://kbr.seesaa.net/article/123208730.html

竺仙
http://www.chikusen.co.jp/

この記事を書いた人

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