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織りと染めの名古屋帯の違いと着こなし

   2017/02/21 コーディネート

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目次
1、名古屋帯の由来とカタチ
2、八寸名古屋帯と九寸名古屋帯
3、後姿の印象の違い ~八寸名古屋・九寸名古屋・袋帯~
4、織りの名古屋帯と染の名古屋帯
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現在、女性の帯として一般的によく使われている帯と言えば、袋帯、名古屋帯、半幅帯が挙げられます。
細かいことを言えば、まだいくつか種類はありますが、この三種類がメジャーであると言えるでしょう。

<袋帯> 第一礼装から洒落物まで。
二重太鼓のほか、振袖などの華やかな帯結びや、変わり結びをするときに使います。

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<名古屋帯> 準礼装からカジュアルまで。
一重太鼓や銀座結びにします。

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<半巾帯> 結び方は自由。基本的にカジュアルな着物や浴衣に使います。

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今回は、この中の「名古屋帯」にスポットを当ててお話ししていきます。

1、名古屋帯の由来とカタチ

○名古屋帯の考案者

名古屋帯は、名護屋帯とも記し、大正のころ、名古屋女学校(現・名古屋女子大)の越原春子女史が考案したと言われています。

最初はなかなか世間に受け入れられませんでしたが、この合理的な帯に注目した中村呉服店(現・名古屋三越)の小沢義男氏が、地名と校名にちなみ「名古屋帯」として商品化し、売り出したことで、セミフォーマルからカジュアルまで幅広くカバーできる帯として、名古屋帯は全国に普及しました。

越原女史が創立した、学校法人越原学園のHPには、次のように書かれています。

「女性解放のめざましかった大正時代、~(中略)~ 着用に時間のかかる丸帯や昼夜帯に自ら鋏を入れ、軽くて、時間も早く、自分でしめられる帯を考案したのです。 女性が男性に伍して社会で活躍するには、まず身支度にかかる時間の短縮が肝要と痛感していたのでしょう」

越原女史が着用を楽にするために簡略化した点は、次の二点です。
(1)胴に巻く部分を最初から半分の幅に折って仕立てたこと。
(2)二重にしていたお太鼓を一重にした分、長さを短くし、軽くしたこと。

○名古屋帯って、どんなカタチの帯のこと?

(1)仕立てかたの工夫で巻くときに折る手間を省く

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↑タレ先からお太鼓部分以外は、半分に折った形であらかじめ縫い合わせておく仕立て方です。
「名古屋帯仕立て」と呼ばれる、名古屋帯の定型の仕立ての一つです。
九寸名古屋帯の仕立て方としては、定番ですね。

現在の名古屋帯は、他にも、タレ先から手先までをすべて開いて仕立てる方法や、手先30㎝くらいだけを半巾に縫い閉じておく方法もとられています。
これには、体格の良い方は、帯の幅を広めにとった方がバランスが良いので、縫い閉じない仕立て方をすれば、帯巾を自分で調整できるというメリットがあります。

(2)長さを短くして一重太鼓に結ぶ
名古屋帯の方が袋帯より短いことはご存知でしょうか。
長さが違うので、袋帯と名古屋帯の区別はわかりやすいですね。

平均的に、名古屋帯は3m50㎝か60㎝前後のものが多いように思われますが、仕立て上がりで流通している品を見ると、もう少し長かったり短かったりの幅があるようです。
ちなみに、袋帯は約4m20㎝以上あります。

体型や、締め方・結び方の癖、柄付けの位置によって、使いやすい長さの許容範囲が変わってきます。
アンティークや、昔のリサイクルの帯は短い傾向がありますので、注意が必要です。

2、八寸名古屋帯と九寸名古屋帯

○織り上がりの布巾が違う
名古屋帯の種類として「八寸名古屋帯」と「九寸名古屋帯」という呼称があります。
ここでの「八寸」「九寸」というのは、仕立てる前、反物の状態での帯の生地巾を指しています。

名古屋帯は、機で生地を織る段階で、八寸と九寸の二種類の寸法があるということです。
お仕立て前の九寸帯(茶色)の上に八寸帯(薄いピンク)を重ねると、九寸帯のほうが幅が広いことが分かります。↓
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○仕立て上がると同じ幅になる
仕立て上がった帯の幅は、八寸帯も九寸帯も同じ八寸の幅になります。
なぜかというと、仕立てる方法が違うからです。

九寸名古屋帯は、帯芯を入れ、両端を五分ずつ、合計一寸を縫いしろとして内側に折り込んで仕立てるので、出来上がりは八寸になります。
名古屋帯仕立て↓
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八寸名古屋帯は、帯芯は使わず、お太鼓になるタレの部分だけ折り返し、端は縫い代を折らずにかがるだけですので、そのまま八寸の幅になります。

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八寸名古屋帯は開き仕立てにします。
下図のように、手先部分だけを半巾に折る松葉仕立てもよく見かけます。
八寸松葉仕立て↓
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触ってみるとわかるのですが、八寸名古屋帯の生地は、九寸名古屋帯の生地よりも厚く、しっかりしています。
帯芯を入れなくとも、帯として十分に耐えうる張りと厚さがあるのです。

帯芯とは、帯の表地と裏地の間に挟んで使うものです。
帯に適度な張りとコシを与え、裏と表の生地が捻じれたり捩れたりしないように沿わせ、帯を締めたとき、くたっとならずに綺麗な形を保つために必要なものです。

綿糸で織られたものが一般的で、帯の性質に合わせていろいろな種類があります。
どの帯芯を選ぶかは、着物屋さんや仕立て屋さんなど専門の方に任せればよいでしょう。

○九寸帯を開き仕立てする場合
九寸名古屋帯は、胴に巻く部分を半分の巾に折って仕立てる「名古屋仕立て」が定番ですが、開き仕立てをすることもあります。
帯を胴に巻くとき、帯の幅を調節できることがメリットです。

裏地無しで帯芯を出したままにする方法と、別に裏地を付ける方法とあります。
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○その他
袋名古屋帯、京袋帯と呼ばれる帯があります。
袋帯のように、表地と同じ長さの裏地が最初から織られており、中に帯芯を入れて仕立てます。
構造は袋帯と同じですが、長さが名古屋帯と同じなので、一重太鼓に結びます。

3、後ろ姿の印象の違い

~八寸名古屋帯、九寸名古屋帯、袋帯~

この三本の帯を締めたとして、背中のお太鼓の部分で、それぞれ生地が何枚重なっているかを考えてみましょう。

八寸名古屋帯 帯芯が入らない
( 帯地帯地 )=2枚

九寸名古屋帯 帯芯が入って3枚重なる
( 帯地帯芯帯地 )=3枚

袋帯 帯芯が入った3枚重ねが2枚重なる
((帯地帯芯帯地)+(帯地帯芯帯地))=6枚

生地が重なる、ということは、それだけ重厚感があるとうことです。
お太鼓の厚みは格調高さ、重々しさに繋がります。
反対に、薄さは軽やかさを感じさせます。

○八寸名古屋帯

かがるだけで帯芯の要らない八寸帯は、「かがり帯」ともいいます。
袋帯や九寸帯に比べると、少しお仕立て代がお得です。

帯芯がない分、軽さを体感できます。
特に夏の八寸は、九寸帯に比べると、本当に薄くて軽く、涼やかです。
八寸帯の後姿は軽快で気の置けない、日常的な印象になります。

生地の重なりという点で厚みはなくても、八寸帯はしっかりした張りのある帯地です。
さりげなく肩の力の抜けた、気持ちの良い後姿になるでしょう。

かしこまらない席や、気軽な集まりに適しています。
ただ、金銀のつづれ帯になると格が上がります。

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○九寸名古屋帯

八寸帯よりも、見た目によそ行き感があり、色柄の格が高ければ、訪問着や色無地にも合わせることができます。
袋帯ほどの重々しさはありませんが、整った雰囲気になります。
後姿の印象が、重すぎず、軽すぎない中庸の帯ですので、セミフォーマル向きからカジュアル向きまで幅広い様々な意匠があります。

大きく分けて、織りの帯と染めの帯があります。
下の写真は染めの帯です。

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○袋帯

お太鼓が二重に重なった分、厚みがあり、八寸帯とはかなりボリュームが違います。
格調の高さが感じられます。
重みのある豪華な着物に対しては、やはり袋帯の厚みがバランスよく映ります。

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4、織りの名古屋帯と染めの名古屋帯

○着姿の硬さと柔らかさ
(1)織りの帯
織りの帯は、経糸と緯糸の交差で文様を織り出し、糸の色を重ねることで色を作っているので、染めの帯よりも立体的で、文様の輪郭に硬さがあります。
帯地も染帯よりしっかりしています。
そのため、セミフォーマルの場合、織りの帯の方が豪華さや重厚感を演出しやすいですね。

先染めの紬着物にカジュアルな織りの帯を締めると、紬の持っている硬さに馴染んで、きりっと引き締まります。
染帯の優美さとは違う、強さや複雑さ加わります。

また、織りの風合いとして、糸の質感をダイレクトに感じやすいように思います。
色や柄ももちろんですが、質感や素材感でもセミフォーマルとカジュアルの違いがわかります。

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(2)染めの帯
染めの帯には、共通して柔らかな雰囲気があります。
また、後染めの帯地は織りの帯地に比べ、柔らかいものが多いのです。

生地の種類や染色の技法はたくさんありますが、やはり、織り模様よりもなめらかな輪郭の発色となる印象があります。
気張り過ぎない上品さで、女性らしく、さらっとお洒落に装いたいときにぴったりですね。

紬に九寸の染帯をすると、八寸帯よりも格を上げて女性らしさが加わります。
小紋などの後染めの柔らかものに合わせると、流れるような統一感のある、美しい印象になりますね。

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○後姿の違い
お太鼓の形の雰囲気も変わります。
織りの帯の方が、しっかりした角が取れるので、かっちりした形になります。
染めの帯は柔らかいので、丸みのある、やわらかな形になります。

○季節感を表現しやすい染帯
染帯には、季節の絵柄のものが多くあります。
背中の柄は目につきやすいですし、上手に取り入れてお洒落を楽しめると、気分が上がりますね。

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日本は四季が美しく、時事の行事もたくさんありますので、その季節にこそ締める帯を選んでみてはいかがでしょう。

○着物と素材感・雰囲気を合わせる
名古屋帯は、高い格の帯からとてもカジュアルな帯まで、いろいろな帯があります。
どんな着物に、どんな名古屋帯を合わせるとよいのでしょうか。
幾つか例を挙げながら、みていきたいと思います。

例1)有識文様や名物裂文様などの光沢感のある九寸帯
上品な金や銀の輝きがあり、帯地に艶やかな光沢があります。

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調和する着物
・品の良い訪問着、付け下げ、色無地○
・華やかで格のある小紋や江戸小紋○
例えばこんな場面に
晴れ着として、七五三、卒入学式、お茶会、正式参拝などに。また、ホテルや会館でのお祝いの会・パーティなどに。

ミスマッチな着物
・カジュアルな柄の小紋× 帯の文様と雰囲気が合わない。
・紬× 格と風合いに違和感あり。

例2)格と豪華さのある絵柄の染め九寸帯

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調和する着物
・訪問着、付け下げ、色無地○
・江戸小紋、小紋(きれいめのカジュアル過ぎないもの)○
例えばこんな場面に
きちんと感のあるお洒落をして出かけたい、観劇、コンサート、食事会、新年会などのパーティ、など

ミスマッチな着物
・御召、紬× 絵柄の格の高さに紬の素朴さが合いません

例3)ナチュラルな素材感の八寸帯

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調和する着物
・カジュアルな小紋、御召○ 帯によって着姿がよりカジュアルダウンされます。
・紬、綿着物○
例えばこんな場面にぴったり
友人とランチ、ショッピング、旅行、お花見、飲み会、気軽な集まり、など

ミスマッチな着物
・光沢感の強い小紋や江戸小紋△× 絶対にダメとは言えませんが、風合いに違和感を覚えやすいです。
・色無地、訪問着× 格が合いません

例4)趣味性の高い絵柄の帯
多岐にわたる色柄、様々な雰囲気の帯があります。

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外出する目的や場所に合わせて、ストーリー性を考えて着物と組み合わせたりできると、より楽しいですね。
プライベートで思いっきり楽しめる帯たちです。
美術館などの展覧会、個展、演奏会、デート、気張らないパーティ、趣味の集まり、などにいかがでしょう?

調和する着物
・モダンな付け下げ、訪問着△ ハマると素敵ですが、仰々しくなりすぎていないか注意しましょう
・小紋、御召、紬○

ミスマッチな着物
・礼装・正装の格の高い訪問着× 格と装う目的が一致しません。

帯と着物の素材感や雰囲気を合わせることに気を付けると、格が合わない組み合わせになりにくいと思います。
ぜひ、お気に入りの名古屋帯を見つけて、楽しんでいただきたいと思います。

参考サイト

伊藤康子のきものライフコンサルティング
http://kimono-bito.com/z-70213cordinate/index.htm

越原学園 名古屋帯の創案者として
http://www.koshihara.nagoya-wu.ac.jp/about/nagoyaobi.html

名古屋帯の仕立ての種類
http://www.kimono-bito.com/z-31118obi-syurui/index.htm

おしゃれな八寸名古屋帯
http://www.kimono-bito.com/list.php?d_id=20161219222502&category_id=0635

手描き染め九寸名古屋帯
http://www.kimono-bito.com/list.php?d_id=20161219222358&category_id=0125

この記事を書いた人

ban-kiji_kaithit_yamamoto01

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