着物大学

七五三のお母様の着物姿

1、七五三のお母様の着物と家紋について

七五三のお母様に相応しいとされる着物は、準礼装(セミフォーマル)の格の着物です。
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準礼装の着物とは、訪問着、色無地、附下、色留袖です。
家紋については、「無し」・「一つ紋(背中)」・「三つ紋(背中と両後ろ袖)」のいずれでも問題ないでしょう。
五つ紋(背中と両後ろ袖と両胸)は第一礼装ですので、主役のお子様と同格になってしまうので避けましょう。

最近の七五三では、お母様の着物に紋があってもなくてもどちらでもよい、という考え方が多いように思います。

家紋の有無・個数については、地域性や家のしきたり等で意見の分かれる場合もありますので、詳しい方がいらっしゃれば、ご家族やご親戚に相談されるとよいでしょう。

訪問着、附下、色無地の違いについて、詳しくは、「七五三~お母様の着物と帯合わせhttps://kimono-bito.net/?p=969」をご参照くださいませ。

 

2、七五三という行事の性格に相応しい着物の装い

七五三とは、いつ、どんな立場で、どんな場所で行われる行事か考えることで、相応しい着姿を想像してみましょう。

〇立場:子供の成長を祝い感謝する母
〇時間:秋から冬(10月~12月)の昼間
〇場所:神社寺社、お祝いの会食、実家や親戚の家、写真館など

 

〇立場:親として子の七五三を祝う
「立場」とは、言い換えれば役割であり、どう見られたいかということでもあります。
七五三の母親としての立場には、柔らかさや優しさ、若々しさ、品の良さが好印象です。
原色やビビッドカラーより、落ちついた色合いや優しい色合いの方が相応しいでしょう。

こちらの訪問着は、優しいクリームの地色に春秋冬のお花が染まって、大変美しくエレガントです。脇役にも主役にもなれる訪問着でしょう。
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薄い紫色が洗練されて美しい附下です。モダンにも和風にも見えるモチーフ化された花柄は、季節を問いません。入卒式にもお勧めです。
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七五三のお母様には、ガツンとくるようなパンチ力や強さ、重々しさはあまり必要ありません。
こちらの訪問着は、格好良い焦げ茶の地色に大きな柏の葉が個性的で、パンチの効いた豪華さがあります。七五三のお母様というよりは、華やかな席でご自分が主役となれる訪問着でしょう。
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このように、主張する強い個性のある柄や色遣いは、できれば避けた方が良いということになります。
かといって、まったく自分の個性をなくしてしまう必要はありません。
可愛らしいものが好き、ちょっと変わったものが好き、格好いいものが好き、好き嫌いは誰にでもあります。

好みやお似合いになるものは大事にしていただいて、大前提の「子供の成長を祝い感謝する母」というテーマに沿うものと沿わないものを足し引きしていくことが大切です。
むしろ、お洒落、素敵、美しいというワードを感じてもらうには、必ずご自分らしさが必要であると思います。

とにかくお顔と合わせてみて、遠慮ない意見をくれる方や信頼できる専門家にアドバイスを求めてみるのもよいと思います。

訪問着や附下だけでなく、上質な色無地も母親にとって活躍する着物です。
信頼のおけるお店で誂え染めをお考えになるのもよいでしょう。
格調の高さと華やかさとのある色無地は、一人の女性としても、母親としての立ち場にも合う万能の着物です。

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お母様として様々な場面で活躍しそうな着物が決まったら、より一層素敵になる帯を選びたいものです。
帯は礼装用の袋帯を締めます。

水色と金の七宝柄の袋帯。永遠の定番として、長く締めていただけます。
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同じ着物でも、帯で雰囲気が変わります。
金色が多い方が豪華さが強くなり、銀色の割合が多い方が格好良くモダンになります。
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譲り受けたお着物をお召しの際は、個性に合っていない場合もあります。
また、着物にも少なからず流行があり、時代の色がありますので、昔風に見えてしまうこともあります。
帯でご自分らしさを加えたり、着姿の印象を現代風に近づけることができます。
その場合は、より自分らしさのある帯が必要です。

洗練された格好良さが際立つ銀の帯
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青と緑、本金箔が美しい、モダンさや華やかさをプラスしてくれる帯
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〇季節・時間:七五三は11月15日の行事で、たいてい昼間です。
前撮りは別として、その前後10月~12月にお祝いの日を決める方が多くみられます。
季節は秋から初冬なので、着物は裏地のついた袷の着物です。
帯や長襦袢、小物類も袷の季節に準じたものを選びます。

季節を映した秋を思わせる柄も素敵です。
秋の恵み、稲穂に雀の柄の訪問着をお召しです。
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秋の草花
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秋の庭。染まりかけの紅葉。

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季節を選ばない柄行きであっても、色遣いで季節に合わせて調整することができます。
夏の強烈な日差しは、秋の清澄な光に少しずつ変わります。
だんだんと気温も下がり、植物の色、街に見える色も変わってきます。

コーディネートの中に、全体の色数を調節しながら、秋らしい色を取り入れてみてはいかがでしょうか。
ただし、澄んだ色と濁り色を組み合わせると、お互いが汚く見えてしまうので気を付けましょう。
小物で変化をつけることが金額的にも負担が少ないですが、なんとなくではなく、着物と帯をお持ちになって慎重に選ぶことをお勧めいたします。

たいてい、七五三は屋外へお出かけなさると思いますので、秋の昼間の陽光や空の下に馴染み、美しく見えることを意識してみましょう。

 

〇場所:神社仏閣、お祝いの会食、実家や親戚の家、写真館などが考えられます。
神社仏閣というのは、多くが日本風の空間です(中には違う建築様式もありますが)
それを踏まえると、空間に違和感がない柄は古典的な要素を含んでいるものであるように思えます。

もちろん、選択肢を古典柄に限定するものではありませんが、このような本格的な訪問着や附下も七五三のお母様にぴったりです。
ご親戚へのご挨拶や、祝い膳の会食があったとしても、好感度の高い着姿になるのではないでしょうか。

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こちらは古典とモダンの中間のようなセンスの訪問着です。
藤や牡丹、菊などたくさんの四季の花が花束になっています。
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こちらは紫の蔦が美しい訪問着です。
地色がモダンで都会的な薄茶色でありながら、細い葉が伸びる様に凛とした和の雰囲気も感じます。
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次に、琳派の素晴らしい訪問着です。
秋らしい色遣いで神社仏閣にも合いそうですが、主役級のお着物に見えます。
七五三のお母様としては、もう少し控えめであってもよさそうに思います。
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3、最後に

お手持ちのものを活用なさる場合も、新しいものをお求めになる場合も、なるべくお早めに支度を始められると安心です。
どうしてもお子様優先でご自分は後回しになってしまいますが、同時進行していただけたらと思います。

よくわからなくて不安になってしまったら、アドバイスを求めることをおすすめします。
着物に詳しい友人でも、ご家族でも、近くに誰も思いつかなかったら、専門店へ足を運んでみていください。
お電話やメールで相談に乗ってくれるお店もありますので、積極的に情報にアクセスしてみましょう。

以上、書いてきましたことは、着物の絶対のルールではありません。
一つの指標として、参考になるものがあれば嬉しく思います。
皆様に良い出会いがありますように。

 

この記事を書いた人

山本幸子山本幸子
静岡県生まれ。
大学を卒業後和菓子接客販売、OA操作事務を経て某きもの学院アルバイト、着付け礼法師範。
着物アドバイザー。

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